三陸・常磐の豊かな海が誇る美味しい水産物をご紹介する「うめぇもん!通信」。その美味さの秘密と、生産者の想いやこだわりのストーリーをお届けしていきます。
Vol.1は宮城県石巻市鮫浦(さめのうら)の牡蠣。冬の生牡蠣ももちろん美味しいですが、季節ごとに楽しめる牡蠣についてお話しをお伺いしました。

瞬間に旬を閉じ込める

今年も連日異常な暑さ、疲れもどんどん蓄積してきます。ミネラル豊富、滋養強壮にも良く「海のミルク」と呼ばれる牡蠣がおすすめです。宮城県石巻市鮫浦で代々漁師を営む栄漁丸の17代目・阿部誠二さん(41)。
子どもの頃から漁業を手伝っている阿部さんにとって漁師は天職だそう!その阿部さんが育てた牡蠣の身は殻からこぼれんばかり。加熱用の殻付き牡蠣として、量販店へ出荷しています。

阿部誠二さんはなんと17代続く漁師の家系。牡蠣だけでなく獲る魚も市場で評価が高いそう。
水揚げは日が出るころに始まります。船の上からみる朝日は贅沢もの!

宮城県は広島県に次いで牡蠣養殖が盛んな地域。生食用牡蠣は宮城県が1位で、日本最大の生食用牡蠣の産地です。濃厚すぎるほど牡蠣の味を感じることができるのが三陸の牡蠣。大きさも産地によって違い、広島牡蠣が大きく、三陸牡蠣はそれにくらべて小ぶりなのも特徴。現在の牡蠣の垂下式養殖法(※1)は、ここ宮城県で生まれたんですよ。
また、三陸の清浄海域とも言われる綺麗な海で育った牡蠣の幼生(種牡蠣)を牡蠣の産地へも送っています。過去には、フランスやアメリカで養殖産業が危機に陥った時、幼生を送って窮地を救ったこともあったんですって、すごい!

海から揚げられた牡蠣は、養殖ロープから機械を使ってバラします

「昨年6月頭から育てて、1年目にしては身入りもいい。デカくなった!」と阿部さんが手にした牡蠣殻から溢れんばかりのプニプニの身は、食欲をそそります。
「三陸地方は北からの寒流(親潮)と南からの暖流(黒潮)がぶつかる<世界三大漁場>と呼ばれてます。それに沿岸部はリアス海岸のため山に囲まれ、ミネラル豊富な川の水もダイレクトに海に注ぎ、森と海が近い地形が美味しい牡蠣を育てている大きな要因です。山からの水と海水が混じり合った環境で育つ三陸の牡蠣は、他の産地の牡蠣と比べ、濃厚でクリーミーな味わいです」と阿部さん。

瞬間に旬を閉じ込める

石巻の牡蠣は、冬が旬。けれど、夏や秋にも美味しい牡蠣が楽しめるんですよ。産卵を控えた夏にも、身入りのいい牡蠣に出会えるのです。各生産地で身入りのいい時期は違い、育った環境によって味も変化するので、食べ比べも面白いかも。
群馬から石巻に移住し阿部さんのもとで働く、漁師歴6年目の吉井大河さん(28)も、「牡蠣はよく食べます。時間があればカキフライ、あとは蒸したりして食べることが多いです。牡蠣食べるんだったら、一番カキフライが好きですね」。

栄養が豊富な海で育った牡蠣は「ミルクのような美味しさ」と称されるほど。
担い手の吉井大河さん(手前)。大学の時、石巻の漁師と出会い、卒業後に漁師の道を選びました

牡蠣に含まれるタウリンやビタミンB群は水溶性なので、調理時に水に触れないカキフライはおススメ! 身入りが良く栄養をたっぷり含む加熱用牡蠣なら、熱を加えても小さくなり過ぎず、牡蠣の濃厚な味わい楽しめます。さすが漁師さん、わかってらっしゃる。

海洋環境の変化にも柔軟に対応

実は、2023年から新しく牡蠣養殖に参入した阿部さん。これまでは、ホヤの養殖や刺し網漁などを行っていました。しかし、海を取り巻く状況は年々変化しています。「今までホヤをやってたけど、海水温の上昇でホヤが夏腐れして、生産量はこれまでの2割以下になってしまった。だから他に変わるものがないかなーと。牡蠣がだんだん上向きになってたから、牡蠣養殖への参入を決めました」。

一度の水揚げで船がいっぱいになります。このあと手作業で一つずつ殻を綺麗にして出荷。

ここ数年の海洋環境の変化は、阿部さんも身にしみて感じています。「冬は5度6度の海水温が、去年は12度以下にならなかった。おかしいよね。これまでメインだったマダラやヒラメが不漁で、逆に新たにタチウオやアンコウなど獲れ出して、魚種も変わってきてる」。
ホヤ養殖から牡蠣養殖への移行は容易ではありません。船の機材や加工場を整える投資も必要。販路も新たに開拓しなくてはいけません、それでも阿部さんは、「状況に応じて、海に合わせて、魚に合わせてというか…。漁師は、海に合わせるしかないじゃん。こっちの都合で魚は獲れないから……」。

阿部さんは今後も担い手育成に力をいれ、大河くんのような若者を浜に増やしたいと言います

魚種や海洋環境の変化には、過去のデータだけでは太刀打ちできません。固定観念に縛られることなく、新鮮な目で海の状況に対応する創造力も必要になってくることでしょう。
だからこそ阿部さんは、「うちの牡蠣養殖も始まったばかり。若い漁師を育てて、美味しい牡蠣をどんどん育てて、三陸のクリーミーで濃厚な牡蠣をもっといろんな人に食べてもらいたいね」。鮫浦の牡蠣が1年で身入りのいい牡蠣に育ったように、阿部さんもまた牡蠣養殖の道を極めていくことでしょう。

※1垂下式養殖:ホタテの殻を繋げて海に垂らして(垂下)殻に付いた牡蠣の赤ちゃん(幼生)を種牡蠣とし、育成する漁場に移動。さらに、海水が常時入れ替わる潮通りの良い場所で身入りよく育てる養殖法。

 

《阿部さんの取り組み》
2024年度、全国の若手漁師を代表する「JF全国漁青連会長」に選出。日本の魚食文化、海洋環境の変化など、次世代に訴求するため小学校での出前授業を行い、魚を獲るためだけではなく、水産の訴求にも全力で取り組んでいます。全国の若手漁師が、「新しいことに挑戦し、各浜で問題を共有し、課題を解決して行きたい」と交流できる場づくりを目指しています。SNSを有効活用し、JF全国漁青連の取り組みのPRや、飲食店で漁師が魚の魅力を伝える「漁師ナイト」の取り組みなど、漁業者の活動を内外へ発信できるよう検討しています。

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